-Days.1-

4/5
前へ
/21ページ
次へ
「あっの暴力教師ぃぃぃ……教育委員会に訴えてやるぅぅ……」 授業が終わり、昼休み。他の生徒もそうしているように、私は仲の良い友達と机を合わせ、昼食をとりながら愚痴をこぼしていた。クラス替えから約ひと月が過ぎ、ようやく慣れてきた光景だ。 「いやいや、ここ私学だからあんまり教育委員会は権限が……まぁ、確かにあれは良くないと思うけど。でも私に言わせれば、あの重い辞書でバコバコ叩かれて、それでも熟睡してるひかりんの方がよっぽど不思議だったけどねぇ」 呆れたといわんばかりに言うのは、一昨年も同じクラスだった親友の一人、天然な一面もあるがしっかり者の落合由姫(おちあい ゆき)。通称ユキ。 所謂”タコさんウインナー”を頬張りつつ、先ほどの英語教師がしていたであろう身振りをして見せている。 「酷いよユキ! 気付いてたならバコバコ叩かれ出した時に先生止めてくれれば良かったのに!」 「だって、ねぇ……あんだけ叩かれてるのに幸せそうな顔して寝てるからさ。私たちも起こしにくくて」 私の抗議に、ユキに代わって答えたのは、今年初めて同じクラスになった清水悠里(しみず ゆうり)。通称ユウ。 私たち四人の中で、唯一の彼氏持ち《リア充》だ。彼女は苦笑しながら、小さな卵焼きを口に放り込んでいる。 「でもさぁ。脚は横に放り出し、その上ヨダレ垂らして爆睡してるなんて、光莉も随分と女捨ててるねえ」 「あんたにだけは言われたくないよ、チエ!」 言われると予想以上に酷かったらしい痴態を指摘され、私は赤面し反論した。クククと笑う彼女は、ユキと同じく一昨年のクラスメイト・咲山千枝里(さきやま ちえり)。通称チエ。 彼女は机の上に足を組んで座り、短髪と巨乳を揺らしながら、購買部で買った大きなクリームパンを豪快に食いちぎっている。とても人に対して偉そうに女を捨てているなどと言える態度ではない。 「それにしても。あんな幸せそうに、いったいどんな夢見てたの?」 「うー……言わなきゃ、ダメ……?」 夢は、見ている最中は楽しいが、いざ覚めてしまえば内容など人に言えたものではない。今回もまさにその例に漏れないのだが、好奇からズイと詰め寄る三人の迫力は、まったく逃げ場を用意していなかった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加