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月曜日。
連休明けは週で最も気怠い、私が一番嫌いな曜日だ。天気も朝から生憎の雨、じっとりとした湿気がなおさらに憂鬱気分を増幅させる。
「ユウちゃん助けてー、チエが私の焼きそばパンをー……」
「何で私に言うのさ、本人に言いなよ……」
「本人には言っても無駄。食欲と筋肉しか頭に詰まってないから」
暴言だが、妥当であろう。
楽しみに放課後まで取っておいた私の焼きそばパンは今、咲山千枝里の手中――いや、口中にある。
そもそも私が昼ごはんを食べ損なったのは、チエがうっかり廊下のガラスを割ったことに対する説教に巻き込まれたためだ。ところが彼女は空腹の二文字の下に私の食料を奪い、あまつさえ浮かべる〝どや顔〟が無性に腹立たしい。彼女に遠慮とか罪悪感とかいう感情はないのだろうか。
だが、私の怒りにはキレがない。普段なら追い掛け回してでも取り返すところだろうが、今の私には腹を立てる以上のアクションを起こす気力がなかった。
「どうした光莉、今日は朝からずっと悩み顔じゃないか。そんな気分じゃせっかくの焼きそばパンも美味くなかろう。だから私が美味しく頂く」
「謝りなさい」
何故か尊大な態度のチエを、落合由姫が丸めた教科書で叩き、たしなめた。ああ、まるで慈愛の天使だ。至極正当な事を言いつつも結局何もしてくれなかった清水悠里とは違う。
今度焼きそばパンを奢ろう。チエのお金で。
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