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瞼を裏側まで焼き尽くすような白光が、ようやく収まった。目を閉じていたというのに、私の目は陽光に眩んだように視力を低下させている。
「先輩……! いったい何を……」
ようやく絞り出した私の声は、自分でも驚く程に弱々しかった。まだ慣れ切らない目は現状を映すことができず、私は音声のみの世界で様子を窺う。
「何も怖がることはないよ、明日葉さん。僕はただ世界の在り様を、本来在るべき姿に書き直したいだけだ。そろそろ目も慣れてくるだろう? 君にも見て欲しいんだ」
見なくてもわかる、最高に高揚した声だ。先輩がここまで嬉々とした声を上げるところを、私は見たことがなかった。厳密には今も見えてはいないのだが。
先輩の言うように、ようやく視力が回復してきたようだ。
うっすら目を開けると、滲んだ涙にぼやけた世界が、少しずつ像を描き始めた。
「…………!」
目をこすり、さらに鮮明になる像を見る。
それを完全な光景として認識したとき、私は喉の奥から声にならない息を漏らし、絶句した。
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