0人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
空は一面が金色に輝き、そこにある色は他に雲の白しかない。その雲はある一点を中心として波紋状に再配列され、幾重にも層を成して果てない彼方へと続いていた。
私の目の前には、新世先輩がいる。会話もしていたのだから、これは特に変わったところではない。私たちが今いる通学路の道も、また同様だ。しかし、新世先輩の背後――私から見て先輩を挟んだ向こう側に、有り得ないものが存在していた。
先輩より頭一つ高くといったところに、金色に輝く大きな球体オブジェがある。球の半ばほどの所から三本の細い脚が伸びており、バネのように螺旋を描いて接地していた。
その球体部分を椅子にして腰を下ろす者がいる。古代ローマ人が着ていた衣類と天女の羽衣を合わせたような乳白色の衣を着た、中性的な顔たちの男性だ。
胸元には朱色の軽鎧を装備し、流れるような金髪を風に遊ばせている。そして何より目を引くのが、背中から生えた大きな二対の翼だ。白い一対と赤い一対、どちらも非常に絶妙な美しさを持っていた。
この男性こそが、先輩の言う大天使なのだろう。説明をしてもらうまでもなく、一目瞭然だった。
「どうだい? これが僕のパートナー。世界の腐敗に嘆き、新世の輝きを望む者さ」
私は知らず知らずのうち、片足を引いて警戒を強めていた。確かに神々しく、息を呑むほどに美しい。だがその美しさが何故か、私の背筋に冷たいものを走らせていた。
最初のコメントを投稿しよう!