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「男は哀れだなぁ」
あたしの思考を
見透かしたかのように、
拓海さんは背後で
溜め息混じりにささやき、
耳元に顔をすり寄せてくる。
「ああやって
ドクター・レクターは
一生胸を焦がす。
いつでも手に入る女を
あえて手に入れない──
そういう快楽に溺れて、
どんどん自分を削っていくんだ」
「……ああいうキャラクターの
気持ちが、判るの?」
「あそこまで
ブチ切れちゃいないが、
多少はな」
拓海さんに、
どこかが切れてる自覚が
あることには、
毎回クスッと笑ってしまいたくなる。
ぎゅ、と強く抱きしめられた。
「ありゃあ、この世の楽しみを
全部味わった男の最後の娯楽だ。
俺は眺めて妄想に耽りながら
ニヤニヤするだけなんて、ごめんだな」
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