ホワイトデーの夜に…

8/10
前へ
/207ページ
次へ
ひとりぼっちのアタシは、家を飛び出した後、いよてつ松山市駅の広場まで行って、ベンチに座ってボンヤリと考え事をしていた… たっくんとひどい大ゲンカをした直後だったので、アタシの乳房(むね)はひどく痛んでいた。 同時に、たっくんにかみつかれた右のくびすじもひどく痛んでいた。 アタシは、どうしてたっくんにきついことを言ってしまったのかな… たっくん… 今ごろ、アタシがいないから悲しんでいるのかもしれない… アタシ… たっくんに何て言えばよいのか分からない… アタシは、広場で待ち合わせをしているカップルさんたちや銀天街の入り口のゲートについている大型液晶テレビに映っている内子町に本社があります不動産会社の分譲マンションのCMで、杏里さんが歌うラブソングにのせて幸せな家族の休日のシーンを見たので、ますます悲しくなっていた… そんな時であった… 遠くで、たっくんがアタシを呼ぶ声が聞こえていた… たっくん… たっくんなの… ねえ… アタシを呼んでいるのは… たっくんなの… たっくんは、急ぎ足でベンチに座っているアタシの元にやって来た… 「かあさん…かあさん…ここにいたのだ…ぼく…かあさんのことを探していたのだよ…」 アタシは、頭がサクラン状態におちいっていたので、その場でくすんくすんと泣き出した…
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加