第一話 子丑

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むせるような煙草の匂いが 体に染みつくようで、 初めの内は帰ると 全身を何度も洗ったが、 今では自分の匂いのようにも 感じる。 「こっちの男の方がいいよ、 うん、おススメ」 「本当にぃ?」 真っ赤に塗られた唇を 不満げに突き出した女に にこやかに頷いて見せるのも 慣れた。 飲み屋に来た客に タダで占いをして、 当たると評判になったのは いつだったろうかと、 机を離れて行った女の背を 見ながらユウトは思った。 「ユウト」 呼ばれて見るとマスターが 顎でドアを差していた。
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