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むせるような煙草の匂いが
体に染みつくようで、
初めの内は帰ると
全身を何度も洗ったが、
今では自分の匂いのようにも
感じる。
「こっちの男の方がいいよ、
うん、おススメ」
「本当にぃ?」
真っ赤に塗られた唇を
不満げに突き出した女に
にこやかに頷いて見せるのも
慣れた。
飲み屋に来た客に
タダで占いをして、
当たると評判になったのは
いつだったろうかと、
机を離れて行った女の背を
見ながらユウトは思った。
「ユウト」
呼ばれて見るとマスターが
顎でドアを差していた。
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