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「客を怒らすマネすんじゃねぇ!
うまくやれよ、判ってるのか?」
襟を掴まれて、壁に押し付けられた。
隣とのビルの間は
人が通れないくらい狭い。
「おめぇが占いなんて口先で出来る、
なんて言うのは判ってるさ。
だがな、こっちも商売なんだ。
お前目当ての客も
そろそろ離れ出している。
どうにかしてみせろ」
「どうにかって?」
「客を呼び込むんだよ!
じゃなければお前なんて
いらねえんだ」
暗がりでお互いの顔も
良く見えないが、その言葉に
ユウトは黙ってマスターを見つめた。
見た目はおとなしそうな
壮年の男だが、薄暗い世界の
住人なのでそれなりの事をする。
路地裏のさびれたバーが
なんとかやって行けるのも
彼の手腕によるものが多いとも
知っていた。
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