第一話 子丑

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「客を怒らすマネすんじゃねぇ! うまくやれよ、判ってるのか?」 襟を掴まれて、壁に押し付けられた。 隣とのビルの間は 人が通れないくらい狭い。 「おめぇが占いなんて口先で出来る、 なんて言うのは判ってるさ。 だがな、こっちも商売なんだ。 お前目当ての客も そろそろ離れ出している。 どうにかしてみせろ」 「どうにかって?」 「客を呼び込むんだよ! じゃなければお前なんて いらねえんだ」 暗がりでお互いの顔も 良く見えないが、その言葉に ユウトは黙ってマスターを見つめた。 見た目はおとなしそうな 壮年の男だが、薄暗い世界の 住人なのでそれなりの事をする。 路地裏のさびれたバーが なんとかやって行けるのも 彼の手腕によるものが多いとも 知っていた。
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