第一話 子丑

5/19
前へ
/321ページ
次へ
カチン、という金属音がして 煙草に火を点けたマスターは 軽く吸い込むと、夜空に向かい 煙を吐き出した。 「またこのクソ寒い日に 外で寝たくはねえだろう?」 家を飛びだし、 バイトで食いつないできたものの 元々人との付き合いが 苦手な事もあって、 どれもこれも長続きせず、 お決まりの 路上生活になった所を このマスターに 声をかけられたのだが 今ではそれが最悪だったと 思い知る事になってもいた。 黙りこくったユウトにマスターは 言い放った。 「当たる占い師を連れて来い。 占いバーで金儲けできるんだ」 「連れて、って言ったって、 そんな知り合いなんていな…」 「ゴーストライターってのが、 巷じゃあ話題じゃねえかよ。 頭を使えってんだ」
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加