第一話 子丑

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「マデリン」 「へ?」 振り返るとそこに 若い男が立っていた。 濃茶のジャケットを着た彼は 茶色の腰打つ髪はサラサラで、 整った容姿は モデルのようだと思った。 向かい合う人物が外人だと 察するまでに、じっくりと 彼を見入ってしまったヨシキは 我に返るとなけなしの英語を 頭の中から引っ張り出そうと したものの、出て来ない。 諦めて苦笑いをすると 彼の方から話し始めた。 「失礼しました。 飼っている鳩が 付いて来てしまって」 「に、日本語、話せるんだ」 「はい」 そう言うと彼は目を細めて 笑んで見せた。 その優しげな笑顔はなぜか 誰かを思わせるようだと思った。
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