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アル・パチーノという名の渋い男優がいるね。
ゴッド・ファーザーは名演だった。
マフィアのドンである主人公の役で、当然、血も涙もない男のわけだった。
それなのに、長編映画のラストに近いシーンでは、身内の死に身も世もなく泣き叫ぶさまを惜しげもなく見せつける。
どうしようもなく人間的でむしろ幼い子供みたいで……ひどく胸を打たれたものだ。
その、昔から大好きで惚れ込んでいた、鬼才の男優に、その人はほんとうによく似ていた。
仕立てのいい、上質なスーツを着こなしているところなんかも、なんだか妙にそっくりな雰囲気だった。
日本人にしては彫りの深い顔立ちも、秀でた広い額に落ちかかっている、まっすぐな黒髪もすごく似ている。
そして、ドンに負けないくらいの、迫力もオーラも持ち合わせていると感じた。
いったい何者なんだ?
そのとき、僕は、いつのまにか、その人物に見惚れていたらしい。
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