天使のキス

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「いらっしゃい。あれ?君、菊地の?」 良かった、私の事覚えててくれた。 「あの…指輪が壊れちゃって…直してもらえますか?」 「あー、どれ?見せて。」 カバンからハンカチに包んだリングと石を店員に渡す。 「最近、菊地学校来てる?」 「いいえ、海外に行ってるみたいですよ。学校も休学してます…。」 「そう、アイツ急に来なくなったから、モデルの方忙しいのかと思ったんだけど、海外ねー。」 店員は石とリングを組み合わせたり、離したり、リングを覗いたりしている。 「あー、これ、爪が折れてるねー。かなりこだわった細工のリングだし…買ったとこ持ってった方がいいかもよ。爪一つ無いまま固定しても、また石が取れる可能性高いし…にしても、凝ったリングだね。アンティーク?」 首を傾げた。 「アンティーク詳しいヤツいるから、預かってもいいなら直せるかも。」 「本当ですか?」 「じゃあ、一応名前と電話番号、この預かり証に書いてくれるかな?」 私が名前と連絡先を書くと店員が名刺を渡してくれた。 「店長の沢渡です。じゃあ、うちで直せるかわからないけど、また連絡するね。」 「お願いします。」 ぺこりと頭を下げて店を出た。 空を見上げると雨雲が空一面を覆っている。 「わ…雨降るかな。」 遠くの方で雷が鳴り始めた。 駅に向かって走ってる間に雨がザッと降り出した。 カバンを頭に乗せて走っていると後ろから腕を掴まれた。 傘をさして立っている男の人の顔を見て、小さく悲鳴をあげた。 私の腕から手を離すと、口の前で人差し指を立てた。 「お前はいつも大声上げんのな。」 不敵に笑うジェイが立っている。 「ジェイ!」 「元気そうだな梨緒。」
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