14人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「いらっしゃい。あれ?君、菊地の?」
良かった、私の事覚えててくれた。
「あの…指輪が壊れちゃって…直してもらえますか?」
「あー、どれ?見せて。」
カバンからハンカチに包んだリングと石を店員に渡す。
「最近、菊地学校来てる?」
「いいえ、海外に行ってるみたいですよ。学校も休学してます…。」
「そう、アイツ急に来なくなったから、モデルの方忙しいのかと思ったんだけど、海外ねー。」
店員は石とリングを組み合わせたり、離したり、リングを覗いたりしている。
「あー、これ、爪が折れてるねー。かなりこだわった細工のリングだし…買ったとこ持ってった方がいいかもよ。爪一つ無いまま固定しても、また石が取れる可能性高いし…にしても、凝ったリングだね。アンティーク?」
首を傾げた。
「アンティーク詳しいヤツいるから、預かってもいいなら直せるかも。」
「本当ですか?」
「じゃあ、一応名前と電話番号、この預かり証に書いてくれるかな?」
私が名前と連絡先を書くと店員が名刺を渡してくれた。
「店長の沢渡です。じゃあ、うちで直せるかわからないけど、また連絡するね。」
「お願いします。」
ぺこりと頭を下げて店を出た。
空を見上げると雨雲が空一面を覆っている。
「わ…雨降るかな。」
遠くの方で雷が鳴り始めた。
駅に向かって走ってる間に雨がザッと降り出した。
カバンを頭に乗せて走っていると後ろから腕を掴まれた。
傘をさして立っている男の人の顔を見て、小さく悲鳴をあげた。
私の腕から手を離すと、口の前で人差し指を立てた。
「お前はいつも大声上げんのな。」
不敵に笑うジェイが立っている。
「ジェイ!」
「元気そうだな梨緒。」
最初のコメントを投稿しよう!