天使のキス

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天使のキス

長い不思議な夢を見ていたような気がする。 窓の外から鳥たちのさえずりが聞こえる。 重たい瞼をゆっくり、ゆっくり開けると、白い天井が目に映る。 「り…お?梨緒っ?」 やつれた顔のママが私の顔を見て泣き出した。 「マ…マ…」 ママは部屋の扉を開けると大声を出した。 「先生っ!看護師さんっ!誰か、娘が!」 バタバタと数人が走って来るのがわかる。 「梨緒…梨緒良かった!!梨緒ぉっ!!」 ママが私の手を痛いくらいぎゅっと握りしめる。 視界に医者と看護師が入って来た。 そして私の鼻と口を覆った透明のマスクを、外した。 医者と看護師が驚きの表情で私を見つめ、ハッとして聴診器を私の胸にあてた。 「奇跡ですよ…。こんな事、初めてです。お母さん、もう心配入りませんよ。」 「良かったですねー、お母さん。」 医者と看護師がママに声をかける。 ママが肩を震わせて泣いている。 私…どうして病院に? 入院したのって由良じゃなかった? あれ? なんか記憶がこんがらがってる。 「ママ…私…」 「心配しなくていいから。犯人も捕まったし、もう大丈夫だから!」 「犯人…」 医者が私の顔を覗き込むと 「もう大丈夫ですよ。傷が完治するまで安静にしていて下さいね。」 ーーー犯人…傷…? 突然あの日の事を鮮明に思い出した。 「ジェイっ!!」 ベッドから起き上がると腕に刺さったチューブが抜けた。 「梨緒、まだ動かないで!!」 「小峰さん、まだ安静にしていて下さいねー。傷が開くからね…」 看護師に肩を抑えられ、ゆっくりベッドに戻される。
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