PROTECT―LOLITA

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* 俺がその通信を受けて、ロシアから北方領土を通り、北部第一シェルターへとやってきた数日前、そこは跡すら残っていなかった。ただ一つ見つかったのは、後世に状況を伝えようと残していた一冊のメモ帳だけだ。 「大阪か……ずいぶん見ない内に廃墟になったな」   そして、今、俺は大阪へとやって来ていた。ロシアから連れてきた少女と共に……。 「ツバサさん。今ようやくロシア国防長との通信が繋がりました、です、Da-」 「よし、代われ」   言い、少女から通信機を受け取る。 「こちらツバサ。目的地へと到着致しました」 『――よし、ではやる事は分かっているな』   返答として、低い声が返ってきた。名を聞かずとも知れる俺の父だ。 「Da、誰一人として感染者を殺す事なく、ガスの発生源を破壊しろ、ですね。こいつがいれば問題なく出来ましょうよ」   ちらっと、横で欠伸をしている少女を見る。 『その子もまだ実験段階だ。ウイルス濃度の高い発生源近くに行けば、殺人衝動に駆られる恐れもある。十分に気をつけろ』 「Pustyak、大丈夫ですよ。そうなっても大丈夫なように俺がいるんですから」 『……頼んだぞ』   通信が切れる。向こう、ロシア連邦とて悠長に話している暇はないのだ。明確に言うと、未だ各国は対応策が見つかってなく、殺す事の出来ない少女に成す術ない状況である。   呑気に蝶を追いかけている少女を見ていると、こちらはまだ平和な方だと思えてくる。 「リューナ、遊んでないでそろそろ行くぞ」 「ツバサさん、日本の蝶はロシアの蝶より小さくて、捕まえづらい、です、Da-」   蝶と遊んでいる、と言うより蝶に遊ばれているリューナ。 「ほらっ、遊んでないで、行くぞ」 「Da-」   深く帽子を被り、俺達はその場を後にした。
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