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リューナ。性別、女。年齢、十歳。ロシアの生物研究所で生まれ育った俺の妹だ。
Muderウイルスに対抗するための存在として実験動物とされた彼女は幼少の頃からある抗生物質を摂取していた。抗Muderウイルス剤。出所は内密とされているが、開発されたそれを十歳になるその時まで毎日のように注射していた事が俺の記憶としてある。
その結果、十歳になりMuderウイルスに感染した彼女にある異変が生じた。感染者に生じていた動体視力、腕力、脚力といったあらゆる戦闘能力の向上の他、成長しない、病気にならない、栄養の摂取がいらない症状は見られたが、唯一殺人衝動だけ起こす事はなかったのだ。
実験としては成功。今、彼女は試験運転として俺の隣にいる。
「そこまで分かっているなら対処しろ、リューナ」
「Da-」
未だ彼女の右腕には痛々しい注射の跡が残っている。そんな、目に映る現実から背けるようにして俺は、実験動物としての彼女を戦場へと見送った。
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