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「はじめまして、わたしはアイ。よろしく」
Muderウイルス感染者。会話の相手が同じ歳の少女、リューナであるからか、先程までにリューナが感じていた殺気の一切を感じさせない。
しかし、その少女がツバサを射撃したのは明らかであった。ビルの屋上にいた彼女の傍に狙撃したと思わしき狙撃銃を発見したのだ。
「何故、こんな事をしているのです??」
リューナは右耳に付けていた録音機の録音ボタンを押すと、質問を始める。男が相手では会話すらなしえないこの状況を事細かく記録しておくように。
「お空からおもちゃが降ってきたから遊んでいるだけだよ?」
あくまでその少女にとってはお遊びだった。しかし、それはお遊びの範疇をはるかに超えており、独学で学習したのかその少女は難なく弾倉に弾薬を装填していた。
そんな少女を見ていたリューナはそれ以上の質問は止め、考えを巡らせた。そして直ぐにある考えへと辿り着く。
……ここは穏便に済ませよう。
そう思った彼女の行動は実に平和的なものであった。
「これから私と一緒にかくれんぼ、しませんか?」
何を考えたか、狙撃銃を持った少女にかくれんぼを提案したのだ。
「! いいよ! やろう! やろう!」
その返答として言葉と共に少女は銃から手を離し、笑顔を返す。
「じゃあ、アイちゃんが鬼です。私、隠れますから少ししゃがんで目を瞑っていて下さい」
「うん!」
遊べる。それだけでその少女は抵抗なく、リューナの言葉に従った。
「じゃあ、私、隠れますので、少し待ってて下さい……ね!」
しかし、リューナは隠れる様子もなく、一目散に設置された狙撃銃の元へと走り、いとも簡単にそれ破壊した。正確には銃身を素手で半分に折っただけだが。
念の為、弾倉から弾薬を抜いたリューナは即座にツバサへと連絡を取る。
「こちら、リューナ。終わりました、です、Da-」
『――よくやった。すぐに戻ってこい』
「Da-、少しお待ちください」
だが、
「どこに行くの? リューナちゃん」
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