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「遅かったな。何かあったのか、リューナ?」
連絡が来てから三〇分後に戻ってきた、リューナ。電話越しの口調では苦戦している様子は見られなかった筈だが。
「Da-、正直に言いますと、遊んでました。鬼ごっこです、かくれんぼです、あっち向いてホイ、です、Da-」
子供かよ、とツッコミを入れたいぐらいだが、彼女は事実子供だ。反論する余地もない。
「年の近い女の子と会ったら遊びたい気持ちがあるのは分かるが、いくら狙われる事がないからって安心するんじゃないぞ」
「Da-……」
さっきまで実験動物として見ていた自分が馬鹿らしく感じる程、彼女は子供だった。怒られたら反省する、楽しい事があったらはしゃぐ。感情豊かな少女である事には間違いない。
「ところで、ツバサさんは先程から何をされているのです、Da-?」
「? あぁ、偵察だよ、偵察」
俺の手元に持つスマートフォンには、とある映像が映し出されていた。それは衛星からの周辺地域の映像だ。
「通信が安定してきたからさ、今さっき衛星カメラとの同期を取ってみた訳だよ。すると……ほらっ、リューナも見てみろ」
なにやら興味津々としていた様子だったので、渡してやると、
「……なんでしょうか? この黒い点は……」
「俺の頭だよ」
「はっ! という事はつまり、お空からの盗撮! あれ? ツバサさん、お空にはお空しかありません、不思議です!」
「カメラは宇宙にあって、そこから映像を映しているんだ……ほらっ、返せ」
遊び始める前に取り上げる。代わりにしょんぼりした表情が返ってきたので飴玉を差し上げておいた。リューナの扱いには手慣れたものだ。
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