187人が本棚に入れています
本棚に追加
/433ページ
初めて聞いた声は、意外と低くて柔らかいもので、もっと嫌味で高い声だと想像していた私は、思わずそのギャップにまじまじと彼を見つめてしまった。
私よりも彼の方が断然背が高いから、窓の外を見上げる彼を更に見上げる形になる。
雨の音がポツポツから、ザーッと強くなって、空を見上げていた彼の視線がゆっくりと私に移る。
間近で見ると、本当に整った顔をしていらっしゃる…。
あ、瞳は薄茶色なんだ…。
ふわふわ柔らかそうな髪…。
男の人のことを、綺麗だと思ったのは、これが初めてかもしれないー。
「…なに?」
時間を忘れてあまりにぼーっと見てしまっていたせいか、思いっきり不審がられる。
慌てて視線を反らして、やりかけの片付けに戻るフリをしながら、さり気なく、本当にさり気なく、投げ掛けられた会話を続けてみる。
「あ、えっと…、か、傘、持ってるのかなって…。心配になって…。」
最初のコメントを投稿しよう!