はじまり

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無言で睨む澤木。 菜奈は怖がり立ちすくんでいる。 何も言わないのも駄目かな。 無視と思われても厄介だし、、、。 「あ、ごめんなさい。起こしちゃった?」 私はあくまでちょっと気弱を装って澤木に声をかけた。 澤木は私を見て 「別に、、。」 とだけ言った。 き、気まずい、、、! さっさと立ち去ろう! 「な、なら良かった。ごめんね!」 そう言って菜奈の手を引き教室に戻ろうとした時。 「おい。」 びくりとなった。 澤木に呼び止められた。 返事をしないわけにもいかない。 「な、なに??」 「弁当食うんだろ?ここ使えよ。俺もう行くから。」 予想外の事を言われて一瞬思考が止まった。 「いいの?」 「いいよ。」 「ありがとう。」 なんか素直にお礼が言えた。 噂より悪い奴じゃないのかも、、。 澤木はベンチから立ち上がりそのまま立ち去ろうとした。 とっさに声が出た。 「こ、これ!お礼。良かったらどうぞ!」 何か渡さなくちゃ!と咄嗟にイチゴの入ったデザート用のボックスを前に出した。 瞬間 しまった!と思った! イチゴなんて出してどーすんの! ボックスだって返ってくるか分からないじゃん! 第一もし返ってきたとしても教室だとめちゃくちゃ目立つ! そんな考えが頭の中をさーっと通り過ぎた。
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