脱出

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ひやりとした空気が流れる。 空には朝の訪れを喜ぶように雀が飛んでいく。 まるで数時間前までが嘘のように綺麗な朝日が昇る。 その朝日が照らしだす街は今だ消火されていないのであろう煙の筋が幾重にも上がっている。 消防車の音も、 救急車の音も、 パトカーの音も何も鳴っていない。 嘘のように静かだった。 朝になれば奴らがいなくなるんじゃないかと、 これは夢だったんじゃないかと、 淡い期待を抱いていた皆が、所詮期待は期待で終わる事を思い知らされた。 屋上から見回すだけでも数えきれない数のゴブリン達が街の所々に散り散りに徘徊しているのが見えた。 それを見た生徒は泣きながら座り込んだり、呆然と立ち尽くしていた。 屋上にいる生徒達はぐったりと思い頭を下げている。 助けは来るんだろうか、、。 身内は無事なんだろうか、、。 つきもしない携帯を何度も何度も確認しては溜息をついている。 これからどうしたら良いのか何も分からないまま、皆朝日が昇るのをずっと見ていた、、、。
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