脱出

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むき出しの非常階段は音が響く。 その為、足音を立てないように一段ずつ慎重に降りる。 私と澤木は手にモップを握りしめたまま精神を集中させていた。 私達がゆっくり慎重に進む後ろから、3年生の先輩達が同じく足音を立てないようにゆっくりと降りてくる。 4階の屋上から1階まで、普段なら五分くらいの距離の階段を30分近くかけてゆっくりと降りる。 非常階段の出口付近にゴブリンがいないことを確認すると澤木はゆっくりと鍵を開けた。 錆び付いた非常階段の出口扉はギシッと少し音を立てたが、ゴブリンが来る気配は無かった。 澤木と私は頷きあい、後ろにいる3年生の先輩達にも合図を送る 。先輩達は更に自分達の後ろにいる子達に合図を流していく。 ここからは運勝負だった。 「行くぞ!」 澤木は小さくそう言い、私の手を掴むと校舎裏へと走り出した。 それに続いて他の生徒達も一斉に逃げ出し始めた。 しかし、所詮連携の全く取れていない生徒達。我先にと逃げ道を取り合う。中には転んでいる女生徒も見えた。 「あ、、。」 「いいから今は走れ!!」
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