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ピンと張り詰めた空気をなんとかしたくて、心の中でマルコシアスさんを呼んだ。
「ふふっ、あんな腰抜け呼んでも仕方ないよ梨緒ちゃん。」
銀髪の男が笑う。
「年長者に…腰抜けとは失礼な…。」
「マルコシアスさん!」
「ルイくん、これ以上梨緒さんに近づく事は許しません。」
ルイと呼ばれた銀髪の男がため息をつく。
「今日のところは、身を引こう。けど、梨緒ちゃんの魂がまだ誰の物でも無いって事は、梨緒ちゃんは誰の物でも無いって事、覚えといて。またね、梨緒ちゃん。」
ルイは突風を部屋に巻き起こし去っていった。
張り詰めた空気が途切れ、床に座り込む。
「梨緒…大丈夫ですか?」
「うん。マルコシアスさん来てくれて、ありがとうございます。」
「いいえ、私は何も。それより…ルイくんが介入して来るとなると…厄介ですね。ところでジェイさんはまだ戻らないのですか?」
「はい…。何か探し物をしてるって、さっきのルイって人が言ってました。」
マルコシアスさんがリビングに歩き出した。
私とサイファも後に続く。
「梨緒さんの魂の事なんですが…、ジェイさんは何か言っていましたか?」
私は首を振る。
「どういう意味なんですか?」
マルコシアスさんがため息をつくと語り出した。
「早いうちに梨緒さんの魂をジェイさんに渡す契約をした方がいいですね。」
「契約…、私…死ぬの?」
「いいえ。梨緒さんが亡くなる時に魂は天へ昇るか、それとも地獄へ堕ちるかが、ある天使によって選定されるのですが…悪魔と関わっている時点で、残念ですが梨緒さんは地獄へと魂を堕とされます。その前にジェイさんに魂を渡す契約をしていれば、死してもなお永遠にジェイさんと過ごせます。今すぐに死ぬ必要は無いのですが…」
マルコシアスさんから真剣な顔で見つめられる。
「契約程度では…貴女を守れないかもしれません。」
「それはどういう事です!」
サイファが口を挟む。
「梨緒さんは…悪魔と関わる宿命を持って生まれた人間なんです。その魂は悪魔達にとって…一際目立つ魂。全ての魔の者が梨緒さんの魂を狙っていても過言ではないのです。」
マルコシアスさんの言葉に絶句する。
「なぜ梨緒の魂は悪魔と関わる宿命なんです?キョウカの魂だからですか?」
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