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サイファの唇から解放され、突然押し倒される。
サイファの舌が首筋を生き物のように這う。
「やっ、サイファ!ダメっ!!」
艶めいた目で私を上から見下ろす顔はいつものサイファじゃない。
獣のような荒い息遣いで、にっこり微笑む。
「貴女が悪いのです。」
「そんな…っ!」
ペロリと私の頬を舐め、笑みを浮かべる。
「言った筈です、私を口づけで癒し、その後は貴女を抱かせて欲しいと。貴女が私を生かすなら、その責任を取って私に抱かれるのです。」
「やっ、やめてっ!!わ、私の嫌がる事はしないって…」
「ええ、貴女に悦びに満ちた快楽を与えましょう。」
サイファの手が胸を這う。
「あぁ…久しぶりに愛しい梨緒に触れて…身体が漲ります。」
「サイファ…お願い…やめて…」
「その顔が…私を余計に熱くするのです。毎晩あの獣に抱かれて、可愛らしい鳴き声を上げる貴女を…どれだけ奪い返したかったかわかりますか?」
「ごめんなさいっ!でもっ、お願い…許して…」
サイファの手が止まる。
私の上に跨るサイファがゆっくり私から離れた。
サイファは震える両手を見つめていた。
「わ、私は…何を…」
ハッとして私を見つめるサイファが怯えている。
「梨緒…」
サイファが私に手を伸ばした。
その手を払ってソファから逃げる。
「梨緒…待って下さい…。お願いです…梨緒。私は…」
サイファの様子が明らかにおかしい。
ゆっくり立ち上がるとサイファが窓に向かって歩き出した。
「サイファ?」
「私は…下僕でありながら…主人の貴女を…」
サイファが窓を開けるとどしゃ降りの雨音が部屋に響いた。
「サイファ…どこに行くの?」
「私は…貴女のそばにいる資格はありません…。」
「待って…、こんな雨の中外に出ちゃダメだよ。」
サイファの腕を掴む。
「梨緒…私は…貴女の前では結局獣なのです。貴女を奪いたくて、貴女を抱きたくて堪らない…。貴女を苦しめたくないのに…苦しめたい…。恐ろしい悪魔になってしまったのです。」
「サイファ…落ち着いて…」
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