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「梨緒のその手を…掴んで…貴女を…今にも犯してしまいそうなのです。この衝動を抑えられないのです。」
サイファの髪の毛が暴風雨に舞っている。
怯えたような、悲しみに包まれた表情に胸が痛む。
でもサイファを掴んだこの手を離す事が出来ない…。
どうしたらいいの…私…。
「梨緒、その石の意味がわかりましたか?貴女にとって私は、害があっても得はないのです。必要のない私は…貴女の前から去らなければいけないのです。」
「サイファ…」
「その手を離さなければ、私は貴女が嫌がっても…貴女を連れ去ります。決してあの男に見つからない所へ貴女を隠します。それでもいいのですか?」
「……」
答える事が出来ない自分に腹が立ち泣いてしまう。
「梨緒…」
サイファが私の腕を掴むと部屋の中へ入り、窓を閉めた。
「こんなに濡れては迎えに行った意味がありません。」
びしょ濡れのサイファに抱きしめられたまま、泣いていた。
自分が嫌で仕方がない。
ジェイを愛しているのに、サイファを手放す事が出来ない欲張りな自分に苛立つ。
ジェイの激しい炎のような愛情と、サイファの優しく包み込むような愛情に翻弄されてる。
「私…最低だね…。」
「いいんですよ、梨緒。私が悪いのです。貴女のその優しさに付け入ってるのは私なのですから…。」
サイファが濡れた髪の毛に触れた。
「風邪をひきます。シャワーを浴びて温まって下さい。」
サイファに手を引かれバスルームに連れて行かれる。
サイファから濡れた服を脱がされる。
「サイファ…恥ずかしい…。出て。」
俯いたままサイファの胸を押す。
「一緒に…浴びてはいけませんか?」
驚いて顔を上げるとサイファは予想以上にずぶ濡れだ。
濡れたシャツが肌に貼りついていて、寒そう。
「わかった…でも…」
「っくしゅん…」
サイファが可愛らしいくしゃみをする。
シャツのボタンを外し、全てを脱ぎ捨てると私の手を引きバスルームの中へ。
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