Transfiguration

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「梨緒、今日もあの男は帰らないようですね。」 バイトから帰ってシャワーを浴び、バスローブのまま髪の毛をサイファに乾かしてもらっている。 チラッと壁時計を見ると23時過ぎてる。 「うん…。」 「寂しいですか?」 サイファが後ろから抱きしめる。 またドキッとさせられ慌てる。 「だ、大丈夫。」 「梨緒、唇がかさついています。口づけしてもいいですか?」 「だ、ダメです。」 昨日の事を思い出すとサイファから早く離れたくてソファから立ち上がる。 バッグの中のリップクリームを探す。 リップクリームをはみ出す程、念入りに塗る。 「ふふっ、梨緒、唇が白いです。」 ちょっと塗り過ぎたかな…。 手の甲で唇を拭う。 「おいで、梨緒。肌がツヤツヤになる魔法をかけてあげましょう。」 「本当に?」 ソファに座るサイファの前に座り魔法を待つ。 「目を閉じて…。」 「はい。」 唇に何か生温かい物が触れた。 サイファに両肩を掴まれ、じっとしていると口の中に入ってくる。 「…んっ!!」 驚いて目を開けるとサイファに口づけられている。 両手でサイファの身体を押して顔を逸らす。 「サイファ…」 「すみません、目を閉じた貴女が口づけをせがんでいるように見えたので…」 「もうっ!サイファが目を閉じてって言ったんじゃん!!」 「ふふっ、そうでしたか?」 サイファには敵わない…。 本当に詐欺堕天使かもしれない…。 「お肌ツヤツヤ魔法は?」 「いいですが…絶対に途中でやめないと約束できますか?」 「なにそれ…なんか怪しい!」 「私が天使のままなら、私の抱擁で梨緒の心も身体も癒してあげられたのですが…バイトばかりで疲れている梨緒の肌が心配です。」 「えっ?そんなにヤバイの私の肌…」 サイファの指が頬に触れる。 「梨緒、綺麗になりたいですか?」 「勿論!」
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