その一

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 捕まえた者たちは遺体をその地で埋葬することはなく、海へと放り捨てた。  するとその遺体は幻獣である証のように、生きていてもおかしくない姿のままにカラカコスの海岸へとたどり着いた。それを発見したカラカコスの民たちは、みなが涙を流して手厚く土へと葬った。  すればナルィルィスが暮らしていた頃のように植物に再び加護が起こり、カラカコスはまた植物がとても豊かな国へと戻ったのだった。  そのことから、ナルィルィスには幻獣の名前としてだけではなく、どんな状況であっても屈しなかった、つまり「不滅の誇り」という意味を持つようになった。それが短くなり、ナルという単語になったのだ。  ユークは彼から感じたその誇りから、ナルという名前をつけたのだった。 「よろしく、ナル」  自分の名前を理解し、そして気に入ったかのようにナルはいなないた。  そしてその日から、ユークはナルと、アスコルトにいるほかのエクルスたちともそうであるように仲良くなった。気が強い性格に手を焼くことも多かったけれど、競争から離れれば、本来持っていた穏やかさも少しずつ見せ始めた。  そしてたまにナル自身が求めるため、背に跨っては全速力で走らせた。
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