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なドレスにも負けていない。国民からの人気も高い。
ユークもその愛らしさと伝え聞く振る舞いから、敬意としての好意を抱いていた。
「そなたがユーク・バロチルーであるか?」
がたがたと震えながら、ユークは敬礼をして弱々しく答えた。
「はい、間違いありません……私がユーク・バロチルーでございます」
「ほう」
その意味あり気な声の漏れが、またユークを失神手前までに連れていった。しかしこんなところでそうするわけにはいかない。ぎりぎりの精神で耐えに耐える。
「今日はそなたに用があり、私が呼んだ。来てくれて感謝するぞ」
「ありがたき幸せ……」
「そなたのことを色々と訊いてみたいところではあるが、それはのちのこととする。今回そなたを呼んだのは……数日前のことだが、アスコルトの丘で一頭のエクルスとともに駆けておったのは、そなたで間違いはないか? あの速さはトゥルグレッドかの、多分」
間違いなかった。
ここで否定しようがしまいがどちらにせよひどい未来なので、もうユークは観念して重く頷いて肯定した。死ぬ前に一度でもカラカコスの地を踏んでみたかったと、見知らぬも懐かしい土地へと思いを馳せる。
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