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アリル姫は年齢の割には低く落ち着いた声をしていた。振る舞いも彼が聞いていたように気品にあふれて優雅、けれどその奥に王族としての力強さが見え隠れしていた。
「ほう。では、あそこで競ってきたエクルスを追い抜いたことも間違いではないな?」
「その通りでございます……」
どちらにせよ処刑なのだ。ならばすぐに行って欲しいと直訴したくなるくらい、ユークはもうひどく心の中をぐしゃぐしゃにしていた。
「そうかそうか。ならば、やはり決まりじゃな。ユーク・バロチルー。そなたを――」
ようやくやって来た死刑宣告に、彼は走馬灯を見る。生まれてからこれまでに様々なことがあった。
カラカコス人の父とエングリス人の母の間に生まれ、大きな病気もけがもなく順調に育ち、友達にも恵まれ、父親の影響でエクルスの近くで過ごし、国の役に立ちたいと思い立って兵士になり、厳しい訓練の末にアスコルトの所属になり、軍馬たちと触れ合い、仲間と上手くやり、そして色々と数えきれないくらいの思い出がよみがえった。
ちょっと後悔しているのは、実際に戦場に行ったことがないことと、残されてしまう父と母、友達みんな、そしてアスコルトのエクルスたち。
ユークはまぶたを閉じ、みっともなくもあがきたい気持ちを必死で押さえて続きの言葉を待った。
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