その二

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 アリル姫は彼に言った。 「私専属のエクルスライダーに任命する」  彼女が言い終わると、その場にしいんとした空気が流れた。  ゆっくりとまぶたを開いたユークは、彼女の言葉の意味がわからず首を傾げてしまう。  もう一度、姫は彼に言った。今度はよりはっきりと。 「私専属のエクルスライダーに任命する。つまり、私のエクルスに乗り、エクルスレースに出てもらう」 「え、あの、それはエンデュランスでしょうか……?」  エンデュランスというのは馬術競技の一つで、かなりの長距離を走破するもの。示した通りに馬術の一つであるため、それならばユークも何度か経験があった。技術を買われて各兵団対抗のものに駆り出されたことがある。  けれど明らかに姫が差しているものはそうではなかった。 「なにを言っている。エクルスレースなのだから、エンデュランスなどではない。トゥルグレッドを使った、あのレースのことだ。そろそろバンベリーもあるではないか。その専属騎手(ファーストライダー)に任命すると言ったのだ」  隊長が夢中になっている、まさにそのものだった。姫は呑み込みが悪い彼に呆れているよう。
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