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しかしその発言に驚いたのはユークだけではなかった。アスコルト長もそうであるし、周りの者たちも知らされていなかったらしい。一人の貴族の男が慌ててそばによって苦言を呈した。
「姫さま、なにをおっしゃっているのです。専属騎手などと……」
「なにか悪いことでも?」
「バロチルーという名、読みをエングリスのものに変えてありますが、あれはカラカコスの血をひくものですぞ。綴りをご覧ください。そんな者が姫さまのエクルスに乗ってレースに出るなどと……」
その声はもちろんユークにも聞こえていて、思わず彼は俯いてしまう。エングリスの人たちはあまりカラカコスの人たちに良い印象を抱いていない。小さく弱いカラカコスなど、取るに足らない存在だと思っている。悲しいことに、まだ幼いのだ。
「ほう、バロチルーよ。その通りなのか?」
「はい。父はカラカコスの者です」
その肯定に周りがざわついた。ひそひそとなにやら話している。
「そのことについて、お前は自分の血を呪ったことはあるか? 正直に答えるがよい。回答内容でどうこうするつもりはないが、嘘は許さん」
どう答えるべきか悩んだユークだったけれど、とりあえず最悪の状況を回避できたこと
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