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そうやって色々と興味深く観察していると、声を掛けられる。その方向へ振り向くと、一人の侍女が立っていた。
「厩へご案内します。どうぞこちらへ」
「は、はい」
小走りで近づき、案内に従う。侍女はまだ若く、姫と同年代であるようにしか見えなかった。小柄なユークと背丈はあまり変わらず、それは女の子にしては高い方であった。そして地味ではあるものの、きれいな顔立ちをしていた。こつこつと廊下に二人の靴音が響く。
「驚かれたでしょう?」
「ええ、それは」
「私たちも驚きました。まさか専属騎手をご指名されるとは、夢にも思いませんでしたから」
「どういうことですか?」
「姫さまはこれまで騎手に関してはなにも言われない方だったのです」
「え、ええ。ではどうして僕なんかを……僕、エクルスレースの経験なんてないんですよ」
「本当ですか?」
「本当です。エンデュランスの経験はありますけれど……」
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