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「つまり草レースも?」
「草でもありません……」
侍女は顔を手で多い、ため息を漏らした。ユークは自分もそうしたい気持ちでいっぱいだった。
「姫さま、そういうそそっかしいところがあって……。私はてっきり、どこかの草レースでバロチルー様の騎乗を見、決めたものかと。アスコルトの丘とかおっしゃっていましたし」
「それは、ただ走っていただけで……そこで一頭抜きましたけど」
「そのエクルス、覚えていますか?」
侍女に尋ねられ、ユークはその特徴を必死にならずとも思い出した。彼は一目見たエクルスの特徴を覚えていられる。昨日の飯はすぐに忘れるのに。
「栗毛の額に満月のような星があって、右前脚だけ半白でした」
「それ、もしかして……」
厩に到着し、侍女とユークは中に入る。そして侍女が迷うことなく一つの馬房を指差す。人の気配を察し、差された馬房のエクルスが首を馬房の柵の上から外へと出していた。
「この仔じゃありませんか?」
「あっ、そうです。間違いないです」
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