その二

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のバンベリーとオアケスもそうでしょうね」 「それを付けなかったんですね。手っ取り早そうなのに」 「姫さま曰く、『確実にヴァークロムが主流になる日が来る』とのことで、最近はヴァークロムか、その産駒でしか付けておられませんね」  侍女はなかなかに詳しい。彼女もまたエクルスレースに魅了された人だった。ユークの知らないことを色々と教えてくれる。  母が同じでなければ兄弟と呼ばれないのが、エクルスのルール。けれど父が同じであるので、アスコルトの丘で競争したナルとアスルコートは異母兄弟であった。お互い気づいていたのかはわからない。 「その通り。必ず父系として主流になり、後世に名を残すのはヴァークロム、そしてアスルコートよ」  声の主はアリル姫だった。あの煌びやかなドレスから、エクルスに乗るための簡素な服装に着替えていた。長い髪も邪魔にならないよう、後ろで一本に束ねてある。また印象の変わる出で立ちだった。  言葉づかいも変われば、声色も年相応の活発そうなものになっていた。  座っていてわからなかったけれど、ユークよりも背は低い。 「姫さま、他の者は?」
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