その二

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 侍女が慌てて言う。 「邪魔だから置いてきた。厩でわあわあされても鬱陶しいだけよ。クロコントとか特にうるさいし」  追い払うようなジェスチャーをし、それからこつこつとブーツを鳴らしてユークの前にまで来る。やはり背が低く、小柄なユークでも頭頂部が見えるくらいだった。 「ところで、なかなかトゥルグレッドに興味があるみたいね。いいわ、私が話してあげる。どうせあなたのようなエクルス好きは、あまり血統とか知らないだろうから」  やって来るなりいきなり、トゥルグレッド講座が始まった。ユークは気圧されながら、嬉しさを装って耳を傾けた。 「よい心がけね。じゃあまず、トゥルグレッドについてだけど、トゥルグレッドってどういうものはわかる?」 「えっと、レットエルをより競争向きに改良したものだと」 「そうね。じゃあ、どうやって維持されているかわかる?」 「え、それはトゥルグレッド同士を掛け合わせているのでは」  当然の答えに姫は頷くけれど、それでは足りないと肩をすくめた。 「トゥルグレッドはね、トゥルグレッドであるという血統がしっかりしてなければ認められないのよ。トゥルグレッド血統書(スタッドブック)に記載されている血だけを持つ仔
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