その二

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 ユークは渡された乗馬ヘルメット被って、待っている鹿毛のエクルスに近づき、首筋を撫でた。そうして引きひもを持っていた牧夫に補助されて跨ろうとした時、 「ちょっと待ちなさい。私はあの丘の通りと言ったはずよ」 「わ、わかりました。ではちょっと触りますね」  ユークはナルにしているように、鐙革の長さを主流となっている長さから短くなるように調整した。見たこともない長さに侍女も牧夫も驚きを隠さなかった。  驚いてぼうっとしてしまった牧夫を促し、ユークは騎乗した。少し曲がるくらいの膝が、比べて大きく曲がってしまっている。鐙革が短いから当然のことだ。 「こんな形です」 「キャンターでいいから、少し走らせてみて」 「はい」  牧夫が引きひもを外し、ユークはエクルスに指示を出して駈足(キャンター)をさせる。ゆっくり草原を走り始め、彼は姿勢をさらに特異なものに変えた。腰を浮かせて重心を前の方に乗せ、エクルスの走るリズムに合わせて足首と膝を使った。  これまでの常識を打ち砕いてしまうような、気味の悪いフォームに牧夫と侍女はさらに驚いてしまって、目をぱちくりとさせていた。けれど姫だけは満足そうににこにこと笑みを浮かべる。 「そこから私たちの前を横切るように、ギャロップできる?」 「はい。この仔素直なので、大丈夫です」
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