その二

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 キャンターのまま少し遠くへと離れ、ある程度の距離となれば止まる。ユークの指示をしっかりと聞く、馴致のしっかりされているエクルスだった。そしてやはりトゥルグレッド特有の乗り味の良さがある。  三人の前を通り過ぎるくらいでトップスピードになる。それを計算しての距離だった。 「姫さまー! よろしいですかー!?」  大きく手を振られたので、それをスタートの合図にした。ユークが足で、前に行くように強めに指示を出せばかなりの速さで飛び出した。そしてすぐに襲歩(ギャロップ)、全速力を出すためのフォームに変化した。  ハミを取り、首を使って前へ前へと脚を伸ばす。ユークは腰を浮かしたままの騎乗姿勢から、手綱を絞って押す。鞭が必要ないくらい、このエクルスは走ることに夢中になっていた。  そうしてあっという間に三人の前を通り過ぎた。脚を芝に叩きつける走行音と息遣い、そして風切音がユークの頭を満たす。あまりの気持ちよさにしばらく止めることを忘れてしまい、思ったよりも走らせてしまった。  気づいてユークは手綱を緩め、そして引いて徐々に速度を落とさせた。 「よしよし、どうどう」  一度完全に停止させ、息を入れてやる。それからまたキャンターで三人の元へと戻った。馬上であることを詫びながら、姫にユークは尋ねる。
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