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ユークはエクルスが好きだけれども、競争にはあまり興味を持っていなかった。観戦経験もない。いわゆるテレビのようなものがまだ存在しないこの世界では、現場に行くしか観戦方法がなかった。
「若いエクルスの頂点、能力検定競争ってことですか」
「難しい言葉を使うな……」
「えっと、種としての能力を調べるための競争ってことです。高い能力のエクルスを掛け合わせるほうが、能力の向上に活きますから」
「お、おう、そういうことだな」
隊長は本当にわかったのか怪しい挙動をする。彼にとってエクルスレースは優秀な血を残すためのものではなく、自分が熱くなり、そして儲けることもできるイベントでしかないのだ。
「お前も観てみないか?」
「いや、僕は仕事だって訓練だってありますので」
「おいおい空き時間があるだろう」
「そこは訓練だとか、エクルスの世話とかですから」
面白くないやつだとばかりに隊長は顔を歪ませた。そういう態度が気に入らなかったのか、ユークを乗せているエクルスが威嚇するように鼻を鳴らした。
噛みつかれると思い、隊長は慌てて距離を取った。ユークは手綱を操り、なだめようと
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