1人が本棚に入れています
本棚に追加
「の、野城くんをどうしたんですか………」
奈央子の声は震えていた。すると咲はキッと奈央子を睨んだ。
「これはな、高校生の君にはわからない大人の複雑ぅ~な問題が絡んでいるわけ。代表者の一言で億単位の金がポンポン動くような世界での、『大人の揉め事』なわけ。いち高校生の君が探偵ぶって どうこうしようとした所で、解決するような簡単な話でもねぇんだよ!」
咲は声を張り上げた。奈央子の身体がビクッと縮む。
奈央子は一瞬 黙り込んだが「私、行きますので」と小声で言った。その瞳は強い意志の現れだった。
「それはダメだ。君には観光に行ってもらう」
奈央子が非常階段の方向へ後ずさりする中、咲は一歩二歩、奈央子に近寄る。
薄暗い中、緊張した空気が漂う。
「私は今日は、休むんです!」
「船内にいてもらっては困る。外まで案内しよう。怒鳴って悪かったよ。な?」
咲が奈央子の腕を掴もうとした、その時-…
カッカッカッ
というハイヒールのような靴の足音が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!