蘇る肉体

10/11
前へ
/198ページ
次へ
ヴァリアントが死亡した場合、体内のVも死滅して元の人間の遺体だけが残る。 緑の体色が薄れていき、肌色に戻り、人間の姿を現す。 何ということはない。 このヴァリアントも、ごく普通の青年だったのだ。 何の罪を犯したわけでもないだろうに、 今こうして人の手によって、 その命を絶たれたのだ。 意識そのものは支配されていたかもしれないが、 肉体を殺したのは、 隼だ。 そう頭で考えた瞬間、薄れていた隼自身の人格が戻ってくる。 急に震えだした腕を、青年の心臓部から引き抜く。 気づけば自分の身体も元の身体に戻っていた。 それは味わったことのない感覚。 記憶が無いからなどではない。 まず誰しもが経験しないであろう感覚。 「俺はこの腕を……あの人に刺したのか…」 見たことの無いような量の血にまみれた右腕を左手で掴みながら、隼は跪いた。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加