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「なるほど……。まぁ君の行動が人々に良い影響を及ぼしたのは事実。そこに君がどんな個人的感情を込めるかは自由だからね」
男はそう言って自分の名刺を隼に手渡した。
「『ACE 戦闘部隊司令官兼科学班長』、佐羽木……悠…」
「佐羽木でいいよ。今は政治関係の方に人員を割かれちゃったから戦闘部隊の司令官と科学班を兼人してる」
やはり隼の予想通り、この男、『佐羽木 悠』は政府の人間らしい。
政府の人間。それも司令官ともなれば知っていることは多いはず。
隼は今まで自分が眠っている間に何が起きて、自分が何をされたのか聞いておく必要があった。
と言うより、佐羽木はそれを説明するために今こうして隼の前にいるらしく、隼が質問をするまでもなく佐羽木は言葉を並べた。
「まず、君が昏睡状態だったのは1週間と2日。さっきまで君が入っていた水槽は栄養素の補給や身体のケアをする大きめの点滴のようなものだ。
実はその1週間と2日の間に君の目を醒まさせることも可能だったんだが…………でも、僕たちはその期間をフルに使う必要があった」
「…………あのコンバットスーツか…?」
隼は先程の光景を思い出していた。暴走していながら僅かに隼の脳裏に残った記憶。
あのコンバットスーツを装着した男はヴァリアントの動きに対応し、その拳銃からはヴァリアントの出すエネルギーに酷似した物が打ち出されていた。
そう隼が呟いたのを聞いて佐羽木はホログラムディスプレイを開く。
「察しがいいね。そう。君の持つ血液や細胞から検出したヴァリアントのエネルギーを利用して、ヴァリアントに対抗するべくした戦闘用スーツ『ブラッド・スーツ』を完成させ、
そして検査によって発覚した“初変身後に於いて起こる、副作用による暴走”を鎮めるため、スーツ装着者第一号である『嘉二 京介』を向かわせたというわけさ。
目には目を。ヴァリアントに最も有効なエネルギーは彼らの持つエネルギーそのものだったんだ。
スーツ事態は既に完成していたんだけど、肝心なエネルギーを手に入れることが難しかったんでね。
人民の救助と重ねて、無理矢理ではあるけど君のおかげで本当に助かったよ」
隼はこれを聞いて改めて自分というサンプルが政府から重要視されている事を実感した。
そして同時に、やはり政府も本格的に動かざるをえない程、ヴァリアントの猛威による影響が大きい事もーー
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