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ーー当たり前の日常が壊されるのは簡単だ。
1つの小さなきっかけで、決壊してしまう。
そして隼は選択を迫られた……。
「ブラッド・スーツが完成して、対抗策は打ち立てた。けれどもう1つ、決定的な武器が欲しい。
単刀直入に問おう…………。
君を、ACEの一兵士として数えていいか否かだ」
隼は、案の定直ぐに答えは出せなかった。
戦いの中に身を投じるということは、残酷なまでの命のやり取りだ。
今は自分が人を殺してしまったことに深くショックを受けてはいるが、
勿論、自分の命が絶たれる可能性も十二分にある。
隼は身体を震わせていた。
それは佐羽木にも見えており、隼の心情が手に取るように窺える。
すると、おもむろに佐羽木は自分の左目部分に掛かった長い前髪をかき上げた。
髪の下に隠れていたのは、傷付き、抉られた目に埋め込むように取り付けられた、機械の義眼だった。
よく見ると、髪をかき上げた左手もグローブの下は義手のようだった。
「これは10年前、終戦間際の最後の大規模戦闘での名残。
戦うってことはこういう事さ。
むしろ僕のような状態はまだ幸福なぐらいだ。戦うにはそれを受け止める“覚悟”が要る。
自分が持つ剣を振るうのか、鞘に納めるか…………。
よく考えて答えを出してくれ」
そう言って佐羽木はある物を隼に手渡した。
「これは……」
佐羽木が渡したのは隼のバイクのキーだった。
「バイクは整備して車庫に置いてある。とりあえず外の空気を吸って来るといい」
佐羽木は自らの傷を見せて、戦いを強制することなく隼に考える時間を与えてくれた。
相変わらず淡々とした口調ではあるが、
隼は、佐羽木は信用できる男かもしれないと思い始めていたーーーー
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