7人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーφ地区J地点
時刻は21時を過ぎたところだった。
道路にバイクのエンジン音が響き渡る。
この辺りでエンジン音が鳴るとすれば、稀に届く郵便のバイクか、隣街であるθ地区へと向かうバイクが通る時だけ。
そして今回は後者の方だった。
隼は疲れを溜まらせていた。
無理もない。
あれ程のことがあった後の、都会から郊外であるθ地区へ向かう4時間半超の長旅だ。
しかし、その道中であるφ地区で隼のバイクは止まった。
それは隼の疲労のせいでも、エンジンの故障でもなかった。
「こ、これは……!
どうして、こんな……」
隼は急いでバイクから降りた。
そう、隼が見たものは道路に平伏していたあの子供の死体。
殆ど外出者の居ないこの地区で第一発見者となったのは隼だった。
「き、救急車を……」
隼はポケットの携帯を取り出そうとする。
「多分、もう手遅れだろう」
その声に反応して隼は振り向く。
「あなたは……?」
最初のコメントを投稿しよう!