蝕まれた街

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声の主は三影真次だった。 そして三影は死体の首根っこを掴むと、道路横にあるゴミ置き場に放棄した。 「俺が通った時には既に息は無かった。急ぎの用事があったんで見過ごすしかなかったが、まさかまだあるとはね」 三影が淡々と死体をゴミの中へ放り込むのを見かねて、隼は声をかけた。 「その方法しか無いんですか……? せめて親の元に……」 「悲しい話だが、こんな無法地帯では、産んだ子を結局養うことができずに放棄したり殺害することが多い。 恐らくこの子たちもそうだろう。 もう一度、親元へ返してさらに無惨な姿にされるよりは、こうしてゴミと共に火葬されるのを待つ方が賢明だということだ」 三影は隼の言葉を遮るようにそう言い放った。 「…………あなたはφ地区の人なんですか?」 隼は三影に問いかける。 「俺はθ地区でバーテンダーをやってる三影だ」 「何故、その三影さんが此処に?」 「少しの食料をボランティアでこの地区の住人に配給してる。義務じゃあないが、こんな廃れた街に住む人にも生きる価値はあると思ってね」 三影は、配給の理由を“適当に”付け、手をはらい、自分の乗るバイクの方へと歩き出した。 「すごい……。なかなか出来ることじゃないですよ!」 隼は、三影の一連の言葉から基本は人を愛する優しい人なのだと感じていた。 隼の短所は、人を信じすぎるところかもしれない。 彼の言葉全てを鵜呑みにして、『嘘』を見抜くことができなかった。 「そんなことより、君、こんなとこを通るってことはθ地区に用があるんだろ? 随分疲れた顔をしている。うちのバーで休んでいくといい」 そう言った三影の言葉も、何か企みがあるのではないか……。 そんなことは考えるはずもなく、隼は三影についていくことにしてしまった。 「煙草、吸うかい……?」 三影はバイクに跨がって、隼に、先程の男性に渡したものと同じ銘柄の煙草を差し出した。 「俺はまだ吸える歳じゃないんで……気持ちだけ受け取っときます」 「…そう………」 三影は煙草をしまって、バイクのエンジンをかける。 そうして、二台のバイクは並走してθ地区に向かったーーーー
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