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息子を抱え、母を支えながら救助隊の元へ駆けて行く父を見た隼の頭に一瞬ではあるが、また痛みが走る。
「ぐッ……」
同時に隼に殴り飛ばされたヴァリアントが立ち上がる。
全霊を拳に込めたつもりだったが、全く致命傷にはなっていない。
これはヴァリアント特有の治癒能力と再生能力によるものだ。
ならば、勝負を決めるのは……
“急所への一撃”
両者は向かい合い、お互いの方へと走り出す。
しかし、相手のヴァリアントは数m進んですぐに立ち止まり、右手の掌を前に突き出す。
立ち上がったその瞬間から、手にエネルギーを溜め、レーザーを出す機を窺っていたのだ。
完全に隼の虚を突いた。
ヴァリアントの掌から高速で紫のレーザーが放たれる。
レーザーは完璧に隼の身体に直撃…………
したかに見えた。
ところがレーザーは隼の手前で、壁に遮られたホースの水のように、エネルギーの飛沫をあげながら滞っている。
隼はエネルギーを盾のように形成して、紙一重でレーザーを防いだのだ。
ヴァリアントは少し動揺するが、すぐに左手を突きだして、もう1つのレーザーを発射する。
だがこのヴァリアントも、同種族として解っていたはずだろう。
ヴァリアントに単調な攻撃を繰り返すことが、どれだけ愚かかということを……
次の瞬間には、隼の右腕はヴァリアントの心臓を貫通していた。
驚くほど簡単に、この戦いは終結したのだ。
しかし、隼を本当に苦しめるのは戦いの中ではなく、その後だった……
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