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「ジェイさん、このままでは貴方の方が朽ちてしまいます。力もエネルギーも全然無いじゃないですか!梨緒さんより先に死ぬつもりですか?!」
マルコシアスさんの言葉に驚く。
「ジェイ、よくわからないけど…マルコシアスさんの言う事聞いて!!」
ジェイがゆっくり顔を上げると私に微笑む。
「…わかった。このままじゃお前を守れない…。悪いなマルコシアス。」
ジェイはマルコシアスさんから光の玉を受け取り、それを口元に運びすぅっと吸い込んだ。
ふぅと息を吐くと私の肩をぎゅっと握った。
「梨緒…、アイツに記憶を消される前、俺はお前に妻になってくれと言った。」
ジェイはポケットから何かを取り出すと掌を広げた。
掌の中で輝く指輪。
指輪にはめ込まれた驚く程大きな石が光り輝く。
「ジェイ…」
「永遠に俺のそばにいてくれ。生きていたらお前が出来た事を全て叶えてやる。どこへでも連れて行く。やりたい事、全部叶えてやる。」
ジェイの真剣な表情を見ているだけで胸がきゅっと締めつける。
「私…まだ良くわからないけど…ジェイと、ずっと一緒にいたい。」
マルコシアスさんが帽子を脱ぐと帽子の中から真っ白な羽根を取り出す。
羽根の先にはペン先が付いていて、それをマルコシアスさんはペロリと舐める。
「では、梨緒さんの魂をジェイさんに渡す契約、成立でいいですね?」
ぎこちなく頷くとマルコシアスさんが私の右手首に何かを書き出した。
「これ…ジェイの胸のタトゥーと同じマーク?」
「ええ。これは堕天使アザゼル、ジェイさんの紋章。梨緒さんが人間としての死を迎え、ジェイさんに魂を渡すとこの仮の紋章が消え、貴女の胸にも同じ紋章が現れます。」
マルコシアスさんが書いたジェイの紋章に触れる。
ジェイが私を優しく見つめる。
「あと3日しかない。会いたい人や、伝えたい言葉を伝えに行くか?」
「そんな事…出来るの?」
うんと頷くジェイ。
「実体はベッドの上だが…、相手の夢や、心に直接伝えたい事を伝えられる。ママや友達に伝えたい言葉があるだろ?」
そっか…もう二度と会えないんだよね。
もう、ママのご飯も食べれない。
由良とふざけ合ったり、ショッピングも行けない。
それが現実なんだと思うと、涙がポロポロと頬を伝う。
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