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いつの間にかマルコシアスさんは姿を消していた。
ジェイは私が泣き止むまでずっと私の頭を撫でていてくれた。
「ジェイ…私、ママと由良に伝えたい言葉が沢山ある。」
「ああ、わかった。…アイツは…いいのか?」
「?」
ジェイが私の目をじっと見つめた。
「父親だ…。」
また胸がきゅっと締めつける。
「考えて…おく。」
ジェイが私をぎゅっと抱きしめる。
「梨緒が死んだ後、生きてる時に関わった人間には二度と会えないが、梨緒も俺もこのままの姿で人間界で人間として生きる事だって出来る。だから、心配するな。」
「いつかどこかでばったり会ったりしない?」
「俺達はもう年を取らない。だから大丈夫だ。」
私の肩で囁くジェイの優しい声に心が落ち着く。
もう、私は人間としては生きられないけど…、ママや由良にも会えないし、大学にも通えないけど、ジェイがずっとそばにいてくれる。
その言葉に安心したのか、死への恐怖が少しだけ紛れた。
「梨緒が行きたかった所、全部行こう。やりたかった事も全部やろう。」
「うん。」
「もうずっと一緒だ。二度と離れない。梨緒、俺の妻になってくれるな?」
ジェイからの…プロポーズ…。
大好きなジェイからの…。
胸がきゅんと甘く疼く。
「…はい。」
ジェイが私を少し離すと熱い視線が注がれる。
大理石のような…不思議な美しい瞳に胸が焦がれる。
ジェイの唇がゆっくり近づき、私の唇をついばむように何度も何度も触れ、吐息が漏れるとジェイの舌が私の舌を絡めとる。
甘くて…切なくて…胸の奥がジンジンする。
「梨緒、愛してる。」
「私も…ジェイの事…愛してる。」
髪の毛を優しく撫でられ、私達は何も無い真っ白な空間でいつまでもいつまでも口づけをした。
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