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そして留衣は、こう続けた。
「それにね、あのお店があたしの居場所なの。大事にしたい人は、みんなあそこにいるから。もしあたしの歌を聴きたいって思ってくれる人がいるなら、お店に来てくれたらいいもの」
勝手だけど。
ちょっとそれは勿体ない気もするけれど。
なら今の俺は、歌姫を独り占めしてるってことか……。
甘える留衣の身体を、包むように抱き寄せて。
俺の方が捕まってしまったような、そんな気がした。
それがないと生きてはいけない、まるで中毒患者みたいに。
けど、幸せっていうのはこれだろうと、俺は確信していた。
fin.
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