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「どこ行ってたんだ?」
「外……頭冷やそうと思って」
「頭? なんで」
汚れたテープをめくりながら、何気なくそう訊いた。
すると留衣は、何か俺に差し出しながら口を開く。
「陣、松井正吾(マツイ ショウゴ)さんって知ってるよね?」
「和泉朱里のプロデューサーだろ? ギタリストの」
留衣は力なくコクン、と頷いた。
受け取ったものは、名刺。
松井正吾と、そう書いてある。
「これが、どうかしたのか?」
留衣に名刺を返してやりながらそう訊くと、彼女は今にも消え入りそうな声で言った。
「ウチの事務所から、歌手デビューするべきだって。そう、言われた」
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