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「あのね、陣。お断りします、って電話だよ?」
イタズラなその微笑みに、してやられたと力が抜けた。
「……びっくりさせんなよー」
「何よ、大人として当たり前でしょ? あたしのこと評価してくれたんだから、放置したりしないでちゃんとお断りしなきゃ」
……それはそうだけど。
まだ湿ったままの留衣の頭を抱き寄せて、俺は溜め息をついた。
「でも、なんで? 歌、好きだろ? やってみたいと思わない?」
「まあね。ちょっとは興味あるけど。でも……」
言いながら、留衣は甘えるように俺の身体に腕を回した。
「松井さんより先に、陣があたしのこと見つけちゃったでしょ? だからもう無理なの」
……そんなこと言ったら、今夜寝かさないぞ、ばかやろう。
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