葵 -2-

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「何か、わくわくするわね」 授業が終わった後、葵はメゾを尾行することにした。 先程受けていた『特殊属性基礎』の授業は本日最後の授業となる。 怪しい行動とやらが、授業中に見受けられなかったということは、学園の外で行われている可能性も考えられる。 だから、尾行。 その少し非日常的な行為に、葵は少し高揚していた。 教室を早めに出て、メゾが出てくるのを待ち受ける。 ――出て来た。 マイペースに片付けを終えたメゾが、ゆっくりと教室を出てくる。 そして、葵も彼女から少し離れてついて行く。 学園内は、まず問題ないだろう、と葵は考えていた。 様々な教室からわらわらと学生が出てきては、葵のカモフラージュに勝手になってくれる。ましてや、メゾと葵には認識はない。尾行に気付かれることはないだろう。 ――見失わないとしないとね。あと、警戒するのは学園を出た後ね。彼女が何処に行くのかによるけど。 そう考えて尾行を始めた――が、 教室を出る。 その教室があった棟を出る。 掲示板を見る。 寮へ戻る。 「終わり?」 思わず声が出た。 葵としてはきっと今から街にでも繰り出すのかと思っていたが、メゾは真っ直ぐに寮へと戻ってしまった。 もちろん、一時的に帰って、着替えて外出する可能性もある。 葵としては、授業が終わったら友達と遊びに行くのが日常だった。 だから、きっと彼女も―― 「あら、葵ちゃん。早い帰宅ね」 そう声をかけてきたのは、寮の管理人だった。
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